同窓生紹介 ドン・ボスコの教え子たち

すらりとした長身。特技は英会話、ギター系、球技系、踊ること、趣味は料理。

脚本家・演出家・俳優

ノゾエ 征爾さん

ノゾエせいじ 1975年生まれ。8歳までアメリカで育つ。サレジオ学院中学校・高等学校卒業。青山学院大学在学中より劇団「はえぎわ」を主宰。脚本家、演出家、俳優として、舞台、映画、テレビ、ラジオ等で活躍。2012年、『◯◯トアル風景』で岸田國士戯曲賞受賞。現代社会における人間の生き様に真正面から向き合いつつ、そのユーモアあふれる温かな視点と、役者や空間を活かす豊かな演出が魅力。本誌でもショートストーリーを連載中。
劇団はえぎわ http://haegiwa.net

サレジオ歴

サレジオ学院中学校・高等学校同窓生

ハートが動くということを大事にしたい

本誌の連載「時を超えて紡ぐショートストーリー」でおなじみのノゾエ征爾さん。今年3月、演劇界の芥川賞といわれる「岸田國士戯曲賞」を受賞。演劇界で大注目のこの人に登場していただいた。

「ドン・ボスコの風」No.9 2012年7月より転載。 記事内容は取材当時のものです。

現在の仕事を教えてください。

脚本家(劇作家)、演出家、そして俳優です。舞台脚本は、自分の劇団では10年以上ずっと書いてて、他からも依頼されて書いたり、ラジオドラマなどもよく書いたりしてました。他に、映画の脚本や、若者向けの雑誌にエッセイやコラムなども書いたりもしています。同時に、舞台の演出家もやり、俳優も、舞台やドラマや映画などでやらせてもらっています。

脚本などのアイデアはどこから?

実体験がベースになっているものもありますし、もちろん完全なる空想もあります。生活するなかで見聞きしてきたものや、周囲の誰かをモデルにしたり。普段から、つねに作品のネタを探しているというか、なんでもすぐに作品に直結して考えるようになっているので、仕事と遊びの境がない感じになっていますね。でも、苦ではないです。やっぱり好きなんだと思います。

仕事の喜びは?

劇団はえぎわの稽古風景。ノゾエさんの的確な演出指導で、俳優たちは作品の世界をいきいきと表現していく。

舞台で好きなのは、表現する側もお客さんも、時間や温度やその場で起きていることを全て、同時に体感できるところ。何を感じるかはもちろんそれぞれで違いますが、同じ空間での共有感や一体感が好きです。自分たちが必死で模索したものをお客さんが喜んでくれた日には、その嬉しさといったら代えがたいものがあります。劇団の活動とは別で、ここ数年、毎年10か所ほど高齢者施設で劇の巡業をしてたりもして、意識もはっきりしなかったような方が、泣いたり笑ったりして喜んでくださる。こっちが逆に感動して泣いてしまいそうになる。演劇には何かそういう、人の心を動かす力があるんですよね。

いつからこの世界に進もうと思ったのですか?

大学で演劇を始めてからです。大学入学時に、新入生歓迎公演というのをすごく小さい劇場で観て、初体験のゾクゾクを感じて、こんなにゾクゾクしたものをやってみないのは嘘だ!と思って、演劇部に入りました。何もかもが新鮮で、すぐにのめり込んでいきました。後に「はえぎわ」を立ち上げた当初も、これを職業にするんだという覚悟があったわけでもなく、ただ、やりたいという衝動だけでした。

創作するなかで大事にしていることは?

ハートが動くということを大事にしています。心がビビっと動くところにいたい。そういう行動、表現をしていたい。安全な道、安住はしたくないです。

作品としては、完璧ではないこの世の中で、それでも一生懸命に生きている人たちを愛情いっぱいに描きたい。笑いにもこだわりたいです。

中高時代をサレジオで過ごして培ったことは?

劇団はえぎわの稽古風景

思春期の6年間を過ごしたわけですから、絶対的なルーツになっていますね。あまりに多すぎて、言葉では言い表しきれないです。(川崎にあった)鷺沼校舎のことはすごく思い出します。サレジオで過ごした友達や場所は、自分の立ち帰れるトコロなのかなと思います。いまでも皆よく公演を観にきてくれます。会うとやはり格別に嬉しいです。

そういえば、サレジオ時代、詩を書いていました。高校の時はバンドをやっていたので曲も作っていました。何か表現することが好きだったんでしょうね。

後輩にメッセージを。

「○○トアル風景」より 撮影:梅澤美幸

いろいろ規制もあり、悩みや不安もたくさんあると思います。そのなかで、一つでも二つでも自分が夢中になれるものを見つけられるといいなと思います。なんでもいいんです。友達と遊ぶことでも、部活でも、小さな趣味でも、もちろん勉強でもいいと思います。最も純粋で熱い気持ちがある年頃なのだから、それを大切にしてほしいと思います。夢中になれることは絶対にあるはずなので、恐れずにそれに打ち込んでほしいですね。輝かしい未来は必ず訪れます。それがいつかは、人それぞれだと思いますけど。