同窓生紹介 ドン・ボスコの教え子たち

柔らかい眼差しの奥に芯の強さを感じる語りが印象的だった

聖路加国際病院救急部部長・医師

石松 伸一さん

いしまつしんいち 1959年生まれ。宮崎県都城市出身。聖路加国際病院救急部部長。救命救急センター長。

サレジオ歴

日向学院中学校・高等学校同窓生

必ずなんらかの
自分のタレントがある。

「ドン・ボスコの風」No.8 2012年1月より転載。記事内容は取材当時のものです。

医者、しかも救命救急医になったきっかけは?

実家が産婦人科の開業医でしたから、親や周囲の期待はありました。でもあまり勉強せず、結局、試験のやさしい私立大学の医学部に入りました。卒業近くになって将来どうしようと思った時に、自分の家を継ぐより別の道を選びたかったのです。考えた末、これまで自分が苦労することをせずぬくぬくと生きてきたのだから、医者になったら一番忙しい科に行こうと考えました。自分の卒業した大学の病院には救命救急センターがあり、3日に一度は当直で、同級生よりも倍以上仕事をするかわり一人前になるのが早いと聞いていたのでそこだ、と。

そのままずっと27年間、救命救急の現場にいて感じることは?

世の中不条理だなと感じることがたくさんあります。救急救命は、急病、事故などでの死の現場に立ち会います。とてもいたたまれなく、つらいです。逆によく助かったなということがあります。でも、その時も自分たちが助けたという思いは一つもなくて、助かるべく何かほかの力が働いているんだろうなということを実感できます。

日向学院で培ったことで今生きていることは何でしょう?

習ったことで今でも役立っているものもありますが、一番はあの学校は神さまを教えてくれたこと。この仕事を始めた時、あまりにつらくてやっていられないと思いました。その時に救いを求めたんだと思います。そして学校で教えられた神さまを思い出して洗礼を受けました。後輩に伝えるとすれば、神さまは、一人ひとりになんらかのタレントを与えてくださっていると思います。人によっては数年でわかる人もいるし、一生かけてようやく見つける人がいるかもしれません。でも、必ずなんらかの自分のタレントがあります。それを探し出して最大限に生かしてほしいですね。